中国出張

先日先輩に聞かれて、何度目か分からないくらいの話しをしたので、備忘録として書き留めておこうと思う。

 

僕は、会社の出張で中国に2回、スペインに1回行っている。

そして、今回話すのは2回目の中国出張の時の話である。

 

1回目の中国出張は上司の鞄持ちだったが、2回目は主担当としての出張だった。

主担当として、新製品の工場生産の立ち会いをする事になった僕だったが、既に大きな問題を抱えていた。

それは、自分の担当部品が原因で、工場が止まる可能性である。

 

日本にいる時に気付いていたが、上司に相談したところ、

 

「なんとかなるっしょ!つーかまだまだこれからっしょ!」

 

ということで、一か八か、そのまま出張に行くことになったのだった。

 

そして、その出張には「パワハラさん」と呼ばれる人も同行していた。

叱責を受けないように当たり障りなく立ち回りつつ、一か八かのストレスは、確実に僕の身体を蝕んだ。

 

そして、先行で確認する機会が訪れた。

工場で流動させる前に、問題がないかを確認するのである。

 

その時の僕は、「怒られたら最悪殺るしかない」と思うまでに追い詰められていた。

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そして、運命の日。

何も問題は起きなかったのである。

正確には、小さな問題はあったが工場が止まるようなトラブルは無く、とにかく怒られることもなかった。

 

その日の仕事終わりには、意気揚々とお酒を飲みに行く僕だったが、翌日から下痢が止まらなくなった。

 

食欲も無いし、せめて水でもと思っても1時間くらいで尻から水が出るのである。

結局、日本から持ってきたウィダーだけを飲んだ僕は、尻からはほぼ水を垂れ流すマシンになっていた。

時折、緑のうんちも出ていたが、後から確認するとこれは宿便だったようで、ゲリの極み経験者あるあるだった。

 

そして下痢2日目に突入するも症状は改善されなかった。

その頃には、#2000くらいの紙ヤスリみたいな中国のトイレットペーパーによって、僕の桃尻は破壊されていた。

流石に、出張責任者に相談し、病院に行かせてもらうことになった。

 

中国の大きな野戦病院みたいなとこに連れてかれた僕は38℃越える熱があった。

様々な検査を行い、結果が出たとのことで診察室に呼ばれた。

通訳「ラオユエンだそうです。知ってますか?」

僕「分かりません。」

通訳「ちょっと待ってくださいね…」

と言って通訳から差し出されてスマホには「虫垂炎」と書かれていた。

要するに盲腸である。

通訳「お医者さんがここで切るか、散らすか聞いてます。」

僕「日本で切ります…」

 

ということで、半ベソで会社関係者に電話しまくり、翌日の帰国が決まった。

何か笑ってる人もいた気がするけど、もう僕にはどうでも良かった。

 

その後ホテルに帰って寝ていると、チケットの手配をしている旅行会社から電話があった。

旅行会社「もし機内で体調崩して途中で飛行機を降ろした場合、損害賠償が請求される可能性があります。その場合、億単位となりますが、保険でカバーできないので自己負担です。乗る前に少しでも体調に不安があったら、絶対に乗らないでください。」

僕「頑張ります。」

 

ということで、翌朝。

二日前からまともな食事が取れず、さらに旅行会社の脅しにしっかりビビった僕は、朝から舌を濡らす程度しか水分が取れず、死ぬ寸前の力石徹みたいになっていた。

 

無事空港に着いても、ラウンジの隅っことトイレを、往復して過ごしていた。

 

そして搭乗の時間がきたが、何もなく3時間くらいのフライトが終了。

無事日本に降り立った。

到着は夜遅かったが、空港まで奥さんが迎えに来ており、その日のうちに家に帰ることができた。

そして、パンツにはしっかりうんちが付いており、廃棄することになった。

奥さんは僕のオーダーに合わせてお粥を作ってくれていたが、この時の薄味と安堵感は今も思い出すことができる。

 

そして、翌日。

近所の総合病院の救急に行くことになった。

受付で呼ばれ、診察室に入ると若い女性の研修医とベテランぽい男性医師がいた。

一通り経緯を説明すると「緑の便ですか…」と男性医師が緑の便に興味を示した。

そして研修医と二言三言会話をすると僕にこう言った。

男性医師「お尻見せてもらうんで、お尻出して壁の方に向いてください。」

 

この時の僕はとにかくパニックになっていた。

それもそのはずで、「盲腸で手術なんだ…」と思っていたからである。

注射すら怖い僕、と言えばその時の心理状況を察してもらえると思う。

 

 

 

そして医師にお尻を差し出すよう言われた僕はこの姿勢をとった。

 

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ベッドの幅からいって、絶対におかしいとは思ったけど、ただでさえ頭が不足気味の僕がパニックになっていたのである。

人より大きい身体を折り曲げ、おでこを壁に擦り付けながらバランスを取っていた僕を見て、男性医師は半笑いになりながら、「横になってもらって良いですよ」と言った。

 

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そして、まず研修医の指が入ってきた。

ちなみに感情は無かったし記憶もない。

おそらく、尻の防御力が無く、ストレス無く指が入りすぎたためと思われる。

次の男性医師の指が入ってきた。

その後男性医師は二言三言研修医と会話を交わすと、研修医の指はもう一回入ってきた。

この時ばかりは「おかわりしてんじゃねーよ」と心の中で突っ込んでいた。

 

そして、他にも様々な検査をし、再度診察室に呼ばれた。

結果は「ウイルス性胃腸炎」だった。

「盲腸は腫れてますけど、全体的に晴れてますし、手術の必要はありません。」

安堵した僕は、すぐに会社関係者に電話した。

皆んなに笑われたが、僕は心の底からどうでも良かった。

 

帰り道タバコに火をつけた僕は、奥さんに食べたい物を聞かれ、「丸亀製麺」と答えると、丸亀製麺では全力で食べた。

テンション的には久々にシャバの飯を食べる囚人と同じような感じだった。

 

ということで、とんでもない長文になってしまったが、この時助けられた大事な事がある。

それは旅行保険の存在である。

皆んなも海外行く時は旅行保険入ろうな!おじさんと約束な!

 

ちなみにこの文章は、明日の従兄弟の結婚式に参加する為に、帰省中の電車内で書いている。

この文章を結婚する従兄弟に捧げたいと思う。